”きれいすぎる野菜”は売れない?直売所に求められる“リアル”な価値とは

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はじめに

いきなりですが、皆さんは野菜は何で選んでますか?
値段・品質・産地・栽培農家、いろいろな基準から選んでると思います。
私自身、とある直売所に出荷してる一農家です。

今回はそんな私が驚いたお話をご紹介します。
この記事以降、あなたの基準がまた一つ変わるかもしれません。

見た目より中身~直売所に求められているもの~

「見た目より中身」

なんか、恋愛話で好きなタイプは?
って聞かれた時の答えみたいになってますが・・・

これは僕自身が講演会で聞いた話です。

その講演者の農家さんも直売所に出荷していました。(現在も出荷してますが)
その農家さんは商品の見た目にも気を使っていて、トマトのパッケージに背面が黒で表面が透明の高級感あるスーパーでよく見かける包装袋を使っていました。

しかし、なぜか売れ行きが悪い
味はもちろん美味しいし、パッケージも綺麗、他のライバルは大勢という訳でもないのに。

悩んだ末に、直売所の店長に相談しました。
返ってきた返答に驚愕です、「商品がきれい過ぎる

まさか、きれいすぎて敬遠されるとは夢にも思いませんでした。

店長さんが言うには、”直売所に買いに来る人は何を求めているのか
直売所という環境においてはきれいなピカピカの包装よりも
新聞紙で巻いてあったり、少し土がついていたりする、手作り感のある雑さや朝採りの新鮮さ、
その農家さんの商品というブランドを求めに来ている

きれいすぎるパッケージはむしろ、購入品ではないのか、産地はあっているのかなどの疑惑を持たれることもある、という話でした。

私は概念がひっくり返りましたね。

私の理念の”より美しいものを、よりきれいに”。
この理念ですが、直売所に求められているものとは違う方向性でした。
直売所の特徴として、安い、大容量、新鮮そんな意見が代表的ですが、直売所という販売環境である以上、近頃気にする人の増えている産地が国産は当たり前。
その国産の中で何を選ぶかっていうことになるので、やはり新鮮さや生産者がわかるという安心が売りになるということを改めて考えさせられました。

直売所とスーパー、何が違うのか?

私たちが野菜を購入する場所には、主に「スーパー」と「直売所」の2つがあります。同じ野菜でも、この2つの販売先ではまったく異なる評価軸があることをご存知でしょうか?

スーパーは流通の中で「均一な品質」「見た目の美しさ」「日持ち」といった基準で厳しく選別されます。
一方、直売所は“地元で採れたて”を届ける場。消費者との距離が近く、農家の顔が見えるからこそ、「どんな人が育てたのか」「どれだけ新鮮か」といった“背景”が評価されます。

その違いが、意外にも「きれいすぎる野菜は売れない」という現象を生み出しているのです。

“きれいすぎる野菜”が売れない理由とは?

ある時、直売所にいつもより丁寧に仕立てたサニーレタスを出荷したところ、見事に売れ残った経験があります。
葉の大きさを揃え、痛みも傷もなく、きれいに袋詰めしたものです。しかし、普段よりも“人工的”な印象が出てしまったのか、イマイチ売れませんでした。

直売所の顧客は「スーパーと違うもの」を求めています。つまり、“きれいすぎる=スーパーっぽい=流通品かも?”と疑われてしまうのです。多少の不揃いや泥付きの状態が、「あ、これは朝採りだな」と感じさせる重要な要素になっています

直売所で“売れる野菜”とは?

では、どんな野菜が直売所で売れるのでしょうか?

  • 泥付きの根菜類:収穫したての新鮮さを象徴
  • 葉付きの野菜:家庭菜園風で親しみやすい
  • サイズ不揃いな実もの:自然な生育の証明
  • 市場には出回らない地場品種や家庭料理向きの野菜

これらは、スーパーでなら規格外としてはじかれる可能性のあるものばかりです。しかし直売所では、それこそが“特別な価値”として歓迎されるのです。

パッケージやPOPに込めるべきメッセージ

直売所で野菜を売る際、「見た目の美しさ」だけではなく、「情報」や「ストーリー」が重要です。

たとえば、

  • 「無農薬栽培」ではなく「虫食いを見てください。農薬を使っていません」の方がリアル。
  • 「朝採り」より「今朝6時に収穫しました」の方が共感を得ます。
  • 手書きのPOPは温かみがあり、農家の声が届きます。

直売所では、“見せ方”より“伝え方”が売れ行きを左右すると感じています。

直売所だからこそ届けられる価値とは

直売所は「不格好でも新鮮」「土が付いていても安心」といった、“リアルな野菜”が求められる場所です。見た目の整いすぎた野菜は、逆に敬遠されることもあるのです。

だからこそ、農家である私たちが伝えたいのは、「農業の現場そのままの美しさ」です。
整えすぎない、包みすぎない、でも想いを込めて伝える。そうすることで、直売所ならではの信頼とリピーターが生まれるのではないでしょうか。