土の中に効かせる vs 植物の中に効かせる:農薬メカニズム入門(家庭菜園〜農家)

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粒剤や土壌処理を使ったのに「思ったより効かない」。
逆に、葉に散布したのに「なぜか根元のトラブルが減った気がする」。
こういう“ちぐはぐ”は、農薬の処理方法効き方の性質を同じものとして扱うと起こりがちです。
今回は、土に混ぜる(=土壌混和)植物にしみ込んで動く(=浸透移行性)を分けて考え、どこで何が起きているのかを図解イメージで解説します。

土壌混和タイプと浸透移行性タイプは「同じ分類じゃない」

  • 土壌混和(どじょうこんわ):農薬の“使い方(処理方法)”
    → 土に混ぜ込んで、土の中(または株元周辺)に成分を配置する方法
  • 浸透移行性(しんとういこうせい):農薬の“性質(作物の中での動き)”
    → 作物にしみ込み、体内を移動して効きやすくなる性質

つまり、土壌混和して使う農薬が「浸透移行性を持つ」こともあれば、持たないこともあります。
この組み合わせを見分けるのが、失敗しないコツです。

まず覚えるべきキーワード

有効成分:薬の「効く本体」
残効:効き目が続く期間
処理帯(ゾーン):薬が効く範囲(“効くエリア”)

土壌混和タイプが効くメカニズム:土の中に「効くゾーン」を作る

土壌混和(または株元処理・土壌処理)の狙いは、土の中〜表面付近に “有効成分が効くゾーン” を作ることです。
そのゾーンに、害虫・病原菌・雑草の発芽部位などが 触れる/通る/口に入れる と効きやすくなります。

土壌混和で起きていること(3ルート)

土壌混和での効き方は、だいたい次の3つの組み合わせです(製品で比重が違います)。

① 触れて効く(接触で効く)

害虫などが土の中を動くとき、薬が付いた土粒・薬粒に触れて影響を受けます。
「土の中にいる」「昼は土に潜む」「地表近くを移動する」タイプに理屈が合います。

② 口に入って効く(食べて効く)

土粒が一緒に口に入ったり、地際をかじるときに成分を取り込んだりして効くタイプもあります。
殺虫剤では「接触+食べて」の両方で効く考え方が基本になります。

③ 根から吸われて効く(=浸透移行性がある場合)

土の水分に溶けた成分の一部が 根から吸収され、植物の中に入る ことがあります。
この場合、害虫や病原菌が作物を加害するときに、植物体内の成分を取り込みやすくなります。

⚠️土壌混和=必ず③ではありません。
①②が主体のものもあります。

浸透移行性タイプが効くメカニズム:植物の中に“効き目の通り道”ができる

浸透移行性というと「植物の中を自由にぐるぐる動く」イメージを持たれがちですが、実際は成分ごとに動き方のクセがあります。

特に多いのは、根から吸われた成分が水の流れに乗って上(茎→葉→新芽)へ行きやすいタイプです。逆に、下(根のほう)へ戻る動きは弱い/起きにくい場合があります。
そのため「上の葉では効いたけど、株元の加害には弱く見える」など、効き方の偏りが出ることがあります(=製品が悪いというより“得意な守り方が違う”)。

また、浸透移行性には段階があり、ざっくり言うと次のような違いがあります。

  • 全体に広がりやすいタイプ(株全体を守りやすい)
  • 散布した周辺だけに広がるタイプ(効く範囲が“近所”)
  • 葉の表から裏へしみ込むタイプ(葉の片面散布でも裏側に効きが出やすいことがある)

どれに当たるかは製品で違うので、ラベルやメーカー資料の「浸透移行」「葉内に浸達」「移行性」などの表現がヒントになります。

浸透移行性が“得意”なこと

  • 葉裏や隠れた場所など、薬液が直接当たりにくいところの害虫・病気に届きやすい
  • 植物体内に入ることで、状況によっては 効きが続きやすい(残効が出やすい) 場合がある

浸透移行性の“注意点(誤解されやすい点)”

  • 「虫を見なくても勝手に死ぬ」わけではない
    殺虫剤の場合、基本は「成分を取り込む(=かじる・吸う)」ことで効きます。
    ただし“最初のひと口”で摂食が止まるタイプもあり、「大きな被害になる前に止める」イメージです(被害ゼロ保証ではない)。
  • どこにでも同じ濃さで行き渡るわけではない
    成分によって「上に上がりやすい」「新芽に届きやすい」などクセがあります(ラベルや資料の対象害虫・使用時期がヒントになります)。

4つの組み合わせで理解すると迷いにくい

ここが中級者の“整理ポイント”です。

  1. 土壌混和 × 浸透移行性あり
    • 根から吸われて植物体内へ+土中でもある程度作用
    • 定植時・播種時の「仕込み」で効かせる設計がしやすい
  2. 土壌混和 × 浸透移行性なし
    • 土の中の“処理帯”で勝負(触れる/口に入る)
    • 害虫の潜む深さ・雑草の発芽層など、ゾーンの位置合わせが重要
  3. 散布(茎葉処理)× 浸透移行性あり
    • 当たった面だけでなく、葉の中にしみ込んで効きやすい
    • 葉裏や吸汁性害虫でメリットが出ることがある
  4. 散布(茎葉処理)× 浸透移行性なし
    • 基本は「当てて効かせる」
    • タイミング・散布ムラ・展着(濡れ広がり)などが効き目を左右

どう選ぶ?目的別の“理屈に合う”選び方

土壌混和タイプが向く場面

  • 土の中・地際で問題が起きる(潜む、発芽する、根に近い)
  • 定植・播種など「最初にまとめて仕込みたい」
  • その後の散布回数を減らしたい(省力化)

浸透移行性が向く場面

  • 害虫や病気が隠れやすく、散布が当たりにくい
  • 作物が茂ってきて散布ムラが出やすい
  • 新しく伸びる部分まで守りたい(ただし成分の得意不得意は要確認)

「殺虫・殺菌・除草」で、同じ“処理方法”でも狙いが少し違う

ここまでの話は農薬全般に通じますが、実際の現場では相手(害虫・病気・雑草)によって“効かせたい場所”が少し変わります。イメージをつかむために、代表例を1行ずつまとめます。

  • 殺虫剤:虫に「触れる」「食べる(吸う)」など、虫が成分を取り込むことで効く。土壌処理なら“虫の通り道・潜む場所”にゾーンを作る発想。
  • 殺菌剤:病気が入る前に守る(予防寄り)か、入った後に広がりを止める(治療寄り)かで設計が違う。浸透移行性の有無で「守れる範囲」が変わる。
  • 除草剤:芽が出る層(地表〜浅い層)で止めるのか、葉から入れて根まで弱らせるのかで考え方が変わる。土壌処理では“発芽する層”に効くゾーンを作るイメージ。

同じ「土に使う」「葉に使う」でも、何を止めたいのか(虫の動線・病気の侵入・雑草の発芽)を意識すると、薬剤選びと処理位置がブレにくくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 土壌混和タイプって、全部“長く効く”んですか?
A. 長く効く設計のものもありますが、土質・水分・温度・成分の分解のされやすさで変わります。「土に入れた=必ず長持ち」ではありません。

Q. 浸透移行性なら、散布ムラは気にしなくていい?
A. 気にした方がいいです。浸透しても“入る量”が少なければ効きが弱くなります。まずはラベルどおりの処理を丁寧に。

Q. 土壌混和と浸透移行性、どっちが上級者向け?
A. どちらも考え方はシンプルです。上級になるほど「ゾーンの位置合わせ」「作物の生育ステージ」「天候・土質」で微調整するだけです。

Q. 商品名ごとに“どっちタイプか”見分ける方法は?
A. ラベルの「使用方法(例:土壌混和、株元散布など)」と、説明文の「根から吸収」「植物体内に移行」などの記載が手がかりです。迷ったら登録情報を確認します。

参考資料候補

農林水産省:農薬使用者が守るべき基準・適正使用の資料

農協系の解説:浸透移行性の基本